需要創造型企業 人形のふらここ

本日は、東京都東日本橋にあり、設立した2008年より、全て完売の快進撃を続ける人形の株式会社ふらここ(以下ふらここ)に、坂本先生とゼミ生らと一緒に視察にお伺いしました。








会社名株式会社ふらここ
住所東京都中央区東日本橋3-9-8
資本金5,000,000円
事業内容雛人形・五月人形を中心とする日本人形の製造販売、盆提灯の販売、育児用品の販売
代表者名原 英洋
従業員数20名


株式会社ふらここ代表取締役 原 英洋

代表取締役 原 英洋

ふらここは、東京都日本橋にある、ひな人形と五月人形をつくる会社です。社員数20名(内女性18名)と、まだ新しく小規模ですが、値引きを一切しないで、作った人形は、全て完売させています。また、特注品も1年待ちで約30人もの受注を抱えています。

昔ほど、高額なひな人形を買うことはなくなりました。現在の相場は一般平均で5~10万だそうです。

販売開始が2008年11月1日。当日の9時~12時で注文が397件あり、ホームページがパンクになりそうでした。当時はひな人形が200セットで5月人形は100セットで完売です。今は、15倍になっています。今年も3100セット用意しましたが完売しました。

販売方法は、業界初の無店舗、カタログ、ネットでの限定販売です。業界の常識としては、ネットでお雛さまが売れるなんてことは、誰も考えていませんでした。いろいろな角度から写した写真や、顔や衣裳をズームアップした写真などで、商品が手に取るようにわかるように工夫しました。インターネットで販売のため、北海道~沖縄、最近は、海外在住の日本人からも年間30件ほどの注文が入ることが当り前になっています。更にふらここには、6万4千円~24万円の商品がありますが、すべてが定価販売で完売してしまいます。その平均単価はひな人形で13万円 五月人形で9万5千円 と少し高目です。

なぜ、こうした快進撃を続けることができるのでしょうか?原英洋社長にお伺いいたしました。
20代~30代のお母さんの好みは、昔ながらの伝統的なものとは違います。ひな人形の顔も赤ちゃんの顔。服の色はパステル調。屏風などの組み合わせも、ナチュラルトーンの部屋に飾って、合うような違和感がないものを好みます。大きさも、赤ちゃん用の御茶碗を伏せた位。15体のフルセットも、横45センチ、奥行き40センチに収まるコンパクトなものが好まれます。当初、20代~30代のお母さんの好むようなひな人形を作ってほしいとお願いしても、職人から受けてもらえませんでした。一般的な人形は 細面、彫りが深く、顔立ちがハッキリしていています。衣装も、伝統的な衣装は地味で、落着きの中に気品があるといわれています。一方、ふらここの人形は、若いお母さんの好みですから、赤ちゃん顔で丸くてノッペリしています。衣装もパステル調だったからです。

古い職人に要望を出しても、なかなか原さんがイメージするひな人形を作ってもらえませんでした。そこで比較的若い職人にお願いして、ようやく原さんがイメージした、現在、ふらここが販売しているひな人形ができたのです。

需要創造型企業 人形のふらここ

安定的に受注残を抱えることは、人形職人の生活を守ることに繋がっています。季節もののひな人形の製作は、一時期に集中します。しかし、一年先まで定価販売の注文が入ることで、年間を通して平準化して職人に仕事にお願いすることできています。業界では6ヵ月手形を切るのが当たり前でした。シーズンになって売上が上がらないと支払われず、職人の方が泣き寝入りしている実態があります。手作りの業界、職人が喜んで仕事をするかどうかが直接品質に関わってきます。そして、収入が低く安定しないと、人形職人になろうとする人も現れません。

ふらここの原社長は、祖父が人間国宝の人形師「原米洲」、母もその技術を受け継ぐ「原孝洲」という、人形師を家業とする家に生まれています。
原社長は、大学卒業後、大手出版社に入社しました。ところが、入社から2年が経とうとしていた頃に、家業の経営を担っていたお父さんが体を壊し急逝してしまいます。人形師を継いでいるお母さんを支えるために、原さんが家業に戻って、経営や販売の部分を担うようになりました。

以来20数年、試行錯誤で家業を支えてきましたが、伝統産業を担う古い会社では、新しいことをやるのにも逆風も強く、業界の古いやり方にも疑問を感じるところが多く、家業だけでなく、業界そのものが衰退していってしまうことを強く危惧していました。実際、人形協会所属は350社ですが、所属していない大小の店を合わせて500店ほどです。前年度対比で、業績を落としているのは全体8割で、年を追うごとに、廃業倒産が増えています。

ひな人形を買う機会というのは、一生のうちにそう何度もあるわけではありません。不慣れな買い物のため、お客は、販売員の言葉にうまく乗せられて、よくわからないまま商品を買わされてしまうこともありました。しかし、それができていた時代はまだ業界としては潤っていましたが、景気が低迷してくると今度は安売り合戦が当たり前になりました。

なぜ、安売り合戦になるのか?



ひな人形の業界は、製造と販売が完全に分離した業界構造になっているからです。顔、胴体、小道具を作る人と、分業制になっていいます。各パーツを作る職人が、毎年、開かれる新作展示会に製品を出展し、販売業者がそれぞれのパーツを買い付け、それを組み合わせて販売します。そのため、何店も見て回ったお客様は、「どこの店も同じような人形ばかり売っている」ということになります。人形が同じであれば安い方がいいとなるのは当然です。一方、お客様は、値引きされるという考えを、最初から持っているわけではありません。しかし、他店と変わらないと思っている売り手が勝手にそう思って下げてしまうのです。お客様の方も、何店か回っている間に学習して、「おたくではいくら引いてくれるの?」となっていきました。

製販分離で、お客様の声は作り手まで届きません。店でセールストークか値引きして売ることしかできず、お客様の求めるものがどういうものなのかを考えるような業界ではありませんでした。販売の前面に立ち、お客さんと直に接してきた原さんには、お客さんが何を求めているかを肌で感じていました。ところが、そうしたお客さんの声を製作サイドに伝えようとしても聞いてくれません。昔ながらのやり方でものづくりをすることの何が悪いのか、むしろこれまで培ってきたことを伝承していくことが、伝統産業を担う者の務めだ!というのが家業だけでなく、業界全体の空気だったのです。

原さんの独立を後押ししたのは、2件の同じ理由でのキャンセルの電話です。

「おじいさんとおばあさんから送られてきたひな人形が、気にいらないからキャンセルして欲しい」



というのです。人形は、一昔前は、おじいさんやおばあさんが自分の目で見て選んで、お孫さんにギフトとして買われました。しかし、今は、若いお母さんが決定権を持っています。大きなものや飾り映えのするものは、送り手側が満足するものでした。しかし、15年位前から、お母さんが決定して、おじいさんやおばあさんにお金だけを出して頂くといった状況に変わっていたのです。原さんは「もっとお客様に眼を向けた」といった思いが募り、家業から独立して、ふらここを設立したのです。

ひな祭りは1250年、端午の節句は1350年の歴史があります。少子化といっても、毎年100万人子どもが生まれています。今後、少なくなっても80万、70万人の新生児が生まれるでしょう。しかし、初節句で、かわいい愛子のひな祭りを祝おうと、店頭に足運んで、欲しいものがなくて買い控えする人もいるのが現状です。なぜか?約500店あるひな人形店では、悪しき商売のやり方が変わらず続いてきたからです。

そして、100万人の子どもの内、ひな人形、五月人形を買うのは、35万人です。つまり、65万人は、欲しいものがないのか?購入されません。原社長は、マーケットインの対応ができていないからと言われました。最近、ふらここと同じような人形づくりを真似する同業者も出てきましたが、「お客様の声を聞き続けて、改善を続ける限り大丈夫」と胸を張ります。

原社長によれば、過去1250年の歴史の中で、多くの人が認識しているひな人形の7段飾りといった形になったものは、明治以降であり、それ以前も、時代時代で変わっていったと言います。そして、革新を図ることが、本当に意味で伝統を守ることだと言います。

こうした取り組みにより、ふらここは、旧態依然とした業界の中で、新風を巻き起こして成長しているのです。伝統を言い訳にしないで、お客様が何を望んでいるか?を考え実践したことで、お客様、職人、ふらここの三方よしを実現し、結果として、伝統を守ることに繋がっているのです。

現在、新卒採用を開始し、新しく移転した事務所では、1F2Fがショールームをつくり、肌で、社員がお客様のご要望を感じるように、工事が始まっています。

まさに、商品が売れないのは、需要ではなく、お客様が欲しいものを提供していない供給側の問題であり、衰退業界と言われる業界の中でも、成長できることを証明した会社だと思います。

【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。

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