経営理念は人・・・故堀場雅夫さんの思い

経営理念研究を専門に行う帝塚山大学の田中雅子教授への訪問したり、東京に出張でお越しいただいたときに、お会いしたりと、定期的に情報交換をさせていただいています。田中先生は、一般企業で働いていたことがあるだけでなく、10年以上に渡り、ローランド、堀場製作所、NTTドコモ、たねや他の経営理念の浸透についての研究を行ってきました。

田中教授が、ポロッと、

「結局は、経営理念は、人なのよね・・・経営者次第と思う。アカデミックの世界ではバカにされるけど実感。堀場会長他と10年以上付き合っていると、この人だから浸透するんだどうな~。仕組みも大事だけど、そちらの要素の方が大きいと思う。」

と実感を込めて言われました。

多くの経営者と同じことを言われる・・・・現場指向の学者も、経営者と同じことを感じるのか?と思った次第です。

但し、田中教授は、

「中小企業では、経営者が全て。大企業でも経営者の影響は大きいと思うけど、藤井さんがいう重要管理指標その他がないと、サイズからすると難しいかもしれませんね。」

と、いった現実的なお話もいただきました。








会社名株式会社堀場製作所 (HORIBA, Ltd.)
住所 京都市南区吉祥院宮の東町2
資本金120億1千1百万円
*2015年12月31日現在
事業内容自動車計測機器、環境用計測機器、科学計測機器、医用計測機器、半導体用計測機器の製造販売。分析・計測に関する周辺機器の製造販売。分析・計測に関する工事、その他の建設工事ならびにこれらに関する装置・機器の製造販売
代表者名堀場 厚
従業員数6,831名
*2015年12月31日現在


堀場製作所の創業者、堀場雅夫さんの言葉には、まさに、人となりが出ています。


堀場雅夫さんの言葉


〇もっと利己主義でいいというか、自分を大切にせないかんと思います。人生80年のうちの最も貴重な40年間を使う仕事が、「おもしろ おかしく」なくて、何のために生きるのか。自分の経験で言うと、おもしろいと思ってやった仕事はほとんど成功している。逆に、これはやらんとしょうがないな、というのはうまくいかない。おもしろい仕事をするか、おもしろく仕事をするか。その2つしか成功の道はない。

〇イヤならやめろ!ただ本当にイヤだと思うほどやってみたか?

〇評論家はいらないのです。反対意見は大いに結構、しかし必ず代案をだしなさい。

〇出る杭は打たれるが、出すぎた杭は誰も打てない。出ない杭、出ようとしない杭は、居心地はよいが、そのうちに腐る。

〇ベンチャーを興す条件としては、その仕事が好きで好きでたまらないということ。寝ても覚めても私はこれが無くなれば死んでしまうというくらい好きなことでなかったら、たぶん失敗する。

〇限られた時間の中で、ある一定の成果を出すには、「人のフンドシ」で相撲をとることだ。

〇仕事がイヤだ、会社がイヤだと文句を言うのなら、辞めてしまえばいい。ただし、辞める前に本気で仕事に取り組むこと。本気でやったことのないまま辞めるのは、単に逃げているだけだ。

(起業家の条件について)


〇何よりも大事なのが、起業家の人間性。チャラチャラした人、お金儲けが目的の人は絶対にうまくいきません。もし一時的にうまくいったとしても、社会がそれを許さないでしょう。金儲けを目的にした企業は、いずれ潰れます。

〇人生は一度きりです。だから、自分のやりたいことをしてください。あなたはもしかすると、明日死ぬかもしれません。だから、今この瞬間を楽しく生きてください。つまらない瞬間を積み重ねても、つまらない人生しか送れません。そのことを私は逆説的に「イヤならやめろ!」と言っているわけです。イヤなことを頑張って続けても、なかなかうまくいかないはずです。自分が好きなこと、おもろいと思うことをやらんと成功しません。私は84年間生きてきましたが、イヤイヤ仕事をしながら成功した人を未だかつて見たことがない。失敗している人は、おもろいことが見つかっていない人です。もしくは見つかっていても、それをやっていない人です。

〇みなさんも、常にチャレンジして、人生を満喫してください。ニッチな市場を攻め、その分野でNo1になる。これを徹底してやってきた。大企業は投資効率が低いので参入してこない。だから、私たちのようなベンチャーでもNo1になれる。

〇おもしろいと思えることなら、みんな情熱をもって働く。ただ高い給料をあげたって、仕事が毎日楽しくなかったら良い仕事はできないし、新しいアイデアも出ない。いちどフルスロットルで走ってみたらいい。

〇日本人は自己の実力を過小評価しがち。「どうせできない」という意識がリミッターになっている。それを外して、フルスロットルを踏んでみればいいんです。自分が想像していた以上のスピードが出ますよ。まず自分が「おもしろい」と思えることを見つける。そしてその分野で一流になるためにフルスロットルで走る。そうすれば、世界の舞台で戦える。


昨年の堀場製作所の堀場雅夫創業者の葬儀でのお別れの言葉は、取引先も社員も・・関係者は、すべて、社是である「おもしろ、おかしく」に纏わるお話だったと田中先生に聞きました。

まさに、借り物でない、自分の言葉で、その人が語るからこそ、関係者に浸透するのだと思います。そういった意味で、経営理念は、人と切り離すことができないものであり、事業承継においては、そのことを前提に、見直したり・・といったことが必要なのだと思います。

社員がおもしろおかしく働けるような仕組みを整えています。例えば人事考課シートから、社員の欠点や失敗を指摘するネガティブ評価の欄を排除し、どんなことに挑戦したかだけを評価します。財務の中身を社内ですべて公開し、労働分配率は付加価値の60%以上にし、役員賞与は税引き後利益の6%とルール化することで、社員の不満をなくすといった仕組みに落とし込んでいます。。また、全役員・社員が株主として出資する福利厚生会社をつくって、働きやすい職場のあり方を全員で検討するなど、まさに、経営理念を仕組みとして落とし込んだ人でもあると思います。

しかし、こうした仕組みも堀場雅夫さんだからこそ、うまくいったことが現実だと思います。制度や仕組みは重要ですが、最終的には、経営者、人が企業を創り、未来を創るのだと実感しました。

昨年、9月に堀場雅夫さんは、他界されましたが、「おもしろ おかしく」の社是は、長く堀場製作所に定着していくと思います。


【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。

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