ひとりのお客様の満足と、ひとりの社員の幸せ

2年程前に、静岡のたこ満の平松社長と従業員の方にインタビューをしたことがあります。

近々「カンブリア宮殿」でも放映されることになっていますが、たこ満は、もう、5回ほどお伺いしていて最初に書いた本にも掲載しました。しかし、何度、行っても新しい発見があるのは、経営のレベルの高さが違うからでしょう。訪問する度に、毎回、新しい発見があります。








会社名株式会社たこ満
住所静岡県菊川市上平川565-1
資本金資本金5000万円
事業内容郷土銘菓・和菓子・洋菓子の開発、製造、販売事業、
お菓子教室事業
代表者名平松 季哲
従業員数380人(男50人 女330人)


たこ満の経営理念は、「ひとりのお客様の満足と、ひとりの社員の幸せ」です。

2代目の平松社長は、先代の創業者が開いた個人の和菓子屋を企業へと売上と利益を追求させ成長させたが、自分と苦楽を主にした幹部も含め多くの社員が辞めてしまい、お客様も離れていき倒産の危機を経験します。そして、「確かに売上は上げたが、自分は、ひとりのお客様も満足できないのか?ひとりの社員も幸せにできないのか?」と、究極の精神状態の中で行きついた経営理念が「ひとりのお客様の満足と、ひとりの社員の幸せ」なのです。つまり、理念には思いがありコミットメントの源泉になっているのです。



たこ満では、経営理念を実現するために、新人スタッフへは1年間手書きで大学ノートが10センチの高さになるほど、接客や品質管理に関する教育が行われます。さらに、400名になっている現在でも、毎日、各店舗で起きたことが社員全員から挙げられ、朝4時55分から平松社長は全てを目に通し、デイリーニュースとして全社員が休憩時間や昼休みに読めるように手書きでまとめてコピーして店舗への配送第一便で一緒に入れます。

それにしても、これほど熱心に社員と向き合い、社員教育を行うことの理由について投げかけてみました。

まだ、平松社長のお父さんとお母さんと3人で家業として和菓子屋をやっていた頃です。経済的に困った近所の方が、高校に入ったばかりの娘さんを連れて、娘を雇って欲しいと頼みに来たそうです。職を失い高校に娘を通わせられなくなったというのです。たこ満初めての家族以外の社員です。若い労働力が欲しいと思っていた快くお預かりしたそうです。

そして、一緒に働き始めるわけですが、朝、掃除をしていると裏に隠れてしまいます。不思議に思った平松社長は、毎日毎日、その子の様子を見る度に裏に隠れてしまうことがわかります。実は、当時の同級生が自転車で店の前を通るたびに、店の裏に隠れてしまうことがわかりました。その子の姿を見て、20歳になったり、同級会で元同級生にその子が会った時に、1人の女性として、はずかしくないように育てないといけないと思ったそうです。自分たちは、勉強はうまく教えてあげることはできないが、勉強ができても人に可愛がってもらえない子にならないようにならないように、学校に行かなくても、人に気遣いが出来て、モノを大切したりということができて、女性として恥ずかしくない人、魅力的な女性に育ててあげないといけないというのが、たこ満の原点なのです。

店舗で、お茶出しや、お迎え、お見送りをしたりをやり出したのも、お客様満足が先ではなく、将来、この子がお嫁さんに行って、旦那さんの両親から気が付く子で可愛がられるようにというのが始めた理由であり、今でも継続しています。そのため、言葉はやさしくても、躾は厳しい指導をします。

私が意外だったのは、経営理念と経営管理指標が不一致だとダブルメッセージになるのではないか?といった仮説でしたが、この仮説はあっさり崩れました。

一時間当たりの売上など厳しくしていたのです。工場はラインもお店もしっかりとした利益を管理しているのは、「自分で仕事できる人を育てていきたい。ほどよいプレッシャーがないと人は成長しない。外に出せない人物になってしまう。社員には、たこ満が、たとえ潰れてもどこでもやっていける人になってほしい」からだといいます。

そして、実際は、素晴らしいサービスを生み出しています。前の日の閉店前8時に明朝のケーキなどの予約が入っても、朝、3時から出社して次の朝には、お客様にお渡しします。朝は8時開店ですが、東京へお土産を持っていきたいので7時に欲しいとお客様から言われれば、誰となく出社してお客様にお渡しするといったことを、何の抵抗もなく実施する会社なのです。

平松社長は、

「企業はお客様に喜んで頂かないと継続できない。いくら経営理念で立派なことを言っても、お客様から支持されないとリピートされない。そして、それは、社員を不幸にすることになる。9時~5時で土日は休むといったことでは、お客様は満足しない。このことは、労働基準法を守っていないということと次元が違う。早く出た分、他の日に代休をとってもらっている。理念だけでもダメ、経営もしなければ社員は不幸になる。経済と道徳、論語とそろばん、両方を考えないと永続性がない」



と言われました。社員にインタビューをしても、こうした対応に否定的なことは出てきません。むしろ、お客様に喜んでもらって嬉しいと言われました。

また、平松社長の行動についても確認できました。平松社長は、机に座って仕事をするのではなく立ってデイリー日報などを書きますが、その理由は、製造の方が立って仕事をしているから自分が座ってやるわけにはいかないし、結構、立って仕事をすると仕事が捗るからと言います。

さらに、2008年まで平松社長の自動車は、16年で乗り47万キロのメーターで、オイルが漏れるようになってようやく変えたそうです。その際、お菓子の配送車5台も一緒に変えましたが、何故、そうしたことをするかと言えば、自分が自動車を大切にすると、社員も配送車を大切にするようになるそうです。まさに、率先垂範、並の経営者ではないと思いました。

イマージョンも、たこ満のように前向きな会話が多くなり、厳しさとやさしさが共存してみんなが活き活きする会社になればと思います。また、お客様組織もそうした組織文化への成長変革支援をしていきたいと思います。


【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。

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