大切なことを大切にするシャボン玉石鹸

以前、食の安全にこだわる太子食品工業を紹介しました。
食ではありませんが、食べられる石鹸をつくっているのが、シャボン玉石けんです。2年半前の夏に、北九州のオンリーワン企業の表彰式に坂本先生と一緒にお伺いしたことがあります。授賞式の後、しばらく期間が経ってから、坂本先生や仲間とシャボン玉石鹸を訪問しましたが、実際に、できたばかりの石鹸を工場で食べるという想像もしなかった体験をしました。(ちなみに、以前、シャボン玉ホリデーという番組がありましたが、紛らわしいですが、こちらは、大阪の牛乳石鹸のヒット番組です。)







会社名シャボン玉石けん株式会社
住所福岡県北九州市若松区南二島2-23-1
資本金3億円
事業内容石鹸製品の製造・販売
代表者名森田 隼人


シャボン玉石鹸は、自然石鹸に拘っています。肌にいいだけでなく、自然環境にも優しく特別な処理をしなくても、公害を気にせず製造過程で出る廃棄物を返すことができます。しかし、前の太子食品工業と同様、コストも手間もかかります。合成石鹸が主流になり花王その他が成長し始めると途端に経営は厳しくなりましたが、それでも、自然石鹸に拘り続けた理由を、森田隼人現社長からお伺いしましたので、背景を紹介したいと思います。

1910年創業、100年を超える企業のシャボン玉石鹸は、森田範次郎商店として日用品全般を取り扱う商店でした。1961年から時代の流れから、先合成洗剤の製造・販売を始めました。石鹸を作り始めた当初、自然素材で作っていましたが、その後、合成石鹸の時代が来て森田光德前社長のシャボン玉石鹸も移行していきました。しかし、森田光徳前社長のお母さんが自社の製品を使っていて肌荒れがヒドクなってしまいます。

そうした折に、「機関車を洗う無添剤の粉石けん洗剤をつくってほしい」という依頼が国鉄(現JR九州)からありました。その試作品を家で使ってみると、それまで薬を塗っても、長年、悩まされていたお母さんの皮膚の湿疹がみるみる好くなりました。一方、合成洗剤に戻すと、また湿疹が出てきたことから、自分の湿疹の原因が合成洗剤、つまり自社の製品であったことに気づきます。

1974年、森田光德前社長は、こうした理由から、合成洗剤の取り扱いを一切やめ、無添加石けんの製造・販売を中心に据えることを宣言します。高度成長期、同業他社も合成洗剤を主流で販売しており、同社でも合成洗剤の売上は伸びていました。そのため、社員は、大反対です。

「お客様に自分でも使わない製品を売る訳にはいかない!」



と森田光徳前社長はそれを押し切って合成洗剤と決別しました。

一昔前、心無い農業従事者が、市場に出す野菜と、自分たちが食べる野菜を分けているといった話がありましたが、ダイコー、みのるフーズと同じではありませんが、残念であり、不安な気持ちになったことを覚えています。

シャボン玉石鹸は、無添加石けんに切り替えたことで、月商8000万円あった売上が、約80万円と100分の1になってしまいます。このため、社員は、さらに猛反発しますが、森田光徳社長は無添加石鹸にこだわります。その後、17年も赤字が続き、100人以上いた社員は、5人にまで減ってしまいます。

こうした経営危機になっても続けた理由は、森田光徳前社長が、①商品にほれ込んでいたこと ②お客様からの感謝の手紙をいただいたことです。お客様の感謝の手紙を読む度に、たとえ数は少なくても、こうしたお客様を裏切ることができないと考えたのです。

転機がやってきます。90年代になってくると、一般的な環境への意識も高まってきました。視察にお伺いした際、見せていただきましたが、91年に発行した〈自然流『せっけん』読本〉は、石けんの素晴らしさと、合成洗剤との違いを森田光德社長自身が説明しました。こうしたことが後押しになり、翌92年、黒字へと転換します。

授賞式でこうした経緯を話された森田隼人社長は2000年入社します。

森田隼人現社長の時代は、メーカー受難の時代でした。小売店が巨大チェーン化してバイイングパワーが強くなり、価格、そしてリベートで厳しい状況を求められました。その一方で、時代は環境に関する関心が、さらに高まりました。これはシャボン玉石鹸にとって追い風になりました。

シャボン玉石鹸の企業理念は、下記の通りです。

「健康な体ときれいな水を守る」



石けんの排水は、短期間のうちに水と二酸化炭素に分解されます。川や海に流されるとカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して石けんかすができますが、これは微生物の栄養源や魚のエサなどになり、自然へ還ります。つまり、自然石鹸は、環境にやさしい循環型製品なのです。

そうした理由で、何度も潰れかけたそうですが、世の中も変わり、また、海外市場へての展開といった経営努力もあって現在は、高業績企業になっています。

私自身、賞味期限切れを、偽って販売する企業は問題外ですが、一方、安さを追求しすぎる、流通、さらに、消費者の意識も一因であると思います。太子食品工業、シャボン玉石けんといった真面目に努力する会社を応援することが、世の中を変える一助になるとのではないでしょうか。


【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。

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