雇用を守るために新事業を行う両備グループ

本日は、札幌でアイワードという素晴らしい会社を、坂本先生らと一緒に訪問しました。中小企業家同友会からのご紹介です。事あるごとにいい会社の発掘を行っていますが、本当に、いい会社がたくさんあると、改めて感じました。

アイワードのことは、一度、整理して紹介したいと思いますが、規模が大きくなった理由だけお伝えします。アイワードは270名程の印刷会社ですが、厳しくなり倒産をしかけた会社の面倒を見ることを頼まれたり、障がい者の方が、「アイワードは、いいよ」と友人の同じ聴覚障害を持つ方から噂を聞いてやってきた方を雇用し続けたからです。現在、出版会社もグループ会社ですが、雇用を守るために引き受けたことが事業展開してきた理由です。

私は、アイワールド代表取締役会長 木野口 功氏、代表取締役社長 奥山 敏康氏のお話をお伺いしながら、事業展開や労働組合の関係が岡山の両備グループのことを思い出しました。

両備グループ概要









会社名両備ホールディングス株式会社
住所岡山県岡山市北区錦町6番1号
資本金4億円
事業内容 バス、タクシー事業、旅客船事業、ションピングセンター運営、都市開発、分譲マンション開発をはじめ多数
代表者名小嶋 光信(代表取締役会長) 松田 久(代表取締役社長)
従業員数2132名


2007年4月に両備バスと両備運輸との合併で設立した「両備ホールディングス(株)」を中核企業とし、現在グループ企業数50社、総従業員数は8000人を超える。小嶋光信グループ代表によれば「大きそうに見えるが中小企業の集合体、私は中小企業のオヤジ」。人・モノ・情報を“運ぶ”ことに特化したビジネス展開で、運輸交通部門をはじめ大半が成熟業種に属するうえ、地方鉄道の再生にも取り組んでいるが、赤字会社はグループ内に1社あるかどうかという、良好な経営状態を継続。

少し前にTVニュースで、小嶋代表が尽力した貴志川線の貴志駅の駅長のたまが、亡くなったからです。
駅長は、本物の猫の「たま」です。2003年、貴志川線を運営していた南海電鉄が赤字解消が困難なことを理由に路線廃止を表明したが、岡山県を中心に公共交通事業を行っている両備グループが経営を引き継ぐこととなりました。駅の敷地内にあったたま達の猫小屋は立ち退きを迫られることとなり、困った飼い主が2006年4月1日に和歌山電鐵の開業記念式典を終えた後の小嶋さんに相談し、小嶋の発案によって、「招き猫」になって欲しいとの願いを込めて駅長に任命されて以来、9年務めた後、昨年2015年、帰らぬ猫になりました。



両備グループは、107年の歴史の中で、1度もリストラをしたことはありません。なぜ、50社もあるのか?ですが、リストラをしないために、当時の社員ができそうが業種を立ち上げて、グループとしてシナジーを出してきたからです。

両備グループの経営理念は簡潔に整理され、ホームページにも以下のように掲載されています。
「両備グループの不易な経営理念は『忠恕(ちゅうじょ)』です。これは創業者が大切にしていた言葉で、“真心からの思いやり”と言い換えられます」

小嶋さんからお聞きしたことで少し補足します。

「夫子{ふうし}の道は忠恕のみ(夫子之道、忠恕而巳矣)」――論語・里仁{りじん}篇にある一節だ。意味は、孔子先生の人生は真心を貫くことにある。忠恕は、孔子の説く「仁」の基本、核となる言葉とされるそうです。
 かつて、小嶋にとって両備の経営には多くの“不思議”がありました。
たとえば、①社員をクビにしない、②景気のいいときには動かず不景気のときに大きくなる、③土地転がし・企業転がし・カネ転がしをしない……。忠恕という言葉が浮かんでから、そうした施策を不思議に思う気持ちが消え、「真心からの思いやりを貫いてきた結果、いまの両備の企業風土が培われてきた」と理解できるようになったと言います。

両備グループの経営の特徴に、労使強存共栄思想があります。労使対等のもとにお互いに強く存在し、労使ともに栄えるという考え方です。経営・労組がそれぞれ社会・お客様・社員への思いやりを共有し、それらがよりよくなるように考え、対等の立場で行動することを認め合う関係です。

アイワードも両備グループと同じ考えで、引き受けた会社に労働組合をあえて作り、労使ともに成長するといったことを行っています。

企業が、新しい事業を行うのは、既存事業が厳しくなって次の柱をつくるといった理由が多いと思いますが、雇用を守るために、リストラしないためといった理由は、本来の企業の社会的責任を果たす立派な企業だと思います。

株価を上げるために、マイナス金利他、国もいろいろな政策を打っていますが、政権維持が目的だと批判する人もいます。どうように、株価を上げるために、リストラを行う経営者は、いくら大きな事業を行っていても、尊敬できないのではないでしょうか。


【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。

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