感動の仏蘭西料理店「ル・クロ」ができた理由

本日は、数年前から、時々、お伺いする大阪の感動の仏蘭西料理店「ル・クロ」と黒岩功社長をご紹介します。最近は、日本でいちばん大切にしたい会社5に掲載された天彦産業の望年会で昨年末にもお伺いしました。

「ル・クロ」の一号店は、絶対に飛び込み客が来ない路地裏でスタートした小さなお店で、奥さんと一緒にお腹に2人目のお子さんがいる中、背中に一人目のお子さんを背負って接客をしたという発祥店ですが、現在は、予約がなかなかとれない状況です。2号店は、1階~6階で階毎にコンセプトを変えた素敵なお店です。3号店は、リッツカールトン大阪をしのいでウエディング等で満足度NO1の少し大きなお店です。1号店~2号店席がなかなか取れませんので、3号店で食事をすることが多いのですが、いずれのお店も料理の美味しさは抜群です。さらに、ソースで私の名前の書かれたお皿、トイレの中にもあるウエルカムボード他、非常にきめ細かな接客も感動ものでした。

その秘密を黒岩さんにお聞きしましたので、共有したいと思います。

鹿児島出身の黒岩さんは48年前、遠洋漁業の船乗りのお父さんと、商売をやっていたお母さんとの間に生まれました。小さい時から、小児ゼンソクで学校が休みがち、学校を休むと勉強に遅れがちになりました。そして、無口で根暗、勉強ができなかった黒岩さんは、小学校に入った頃から、いわれのないイジメに合う毎日でした。家に帰ると、まだ小さな弟がいます。お父さんは遠洋漁業、お母さんは商売で家にいません。そのため、食事当番は必然的に黒岩さんの役割です。毎日、キャベツを切ったりして弟と自分の食事を作っていました。

小学校4年の時、家庭科の授業で料理をつくること時間があり、担当の先生が、「誰か、キャベツを切ってくれないか?」と言われた時があっとそうです。その際、普段、勉強が苦手で手を絶対に上げない黒岩さん一人だけが、元気よく手を上げました。そして、キャベツを切って見せると黒岩さんは、周りが驚くほどうまかったと言います。その日、たまたま授業参観の日で、お母さんが教室の後ろで見ていましたが顔を見ると涙を流しています。その時、絶対に料理人になって親孝行しようと思ったといいます。

18歳で鹿児島を後にして、大阪のお店に勤めます。毎日毎日、先輩に怒られる日々でしたが、黒岩さんは嬉しくてたまらなかったといいます。なぜか・・・それは、小学校の頃のイジメられていた時は理由がありませんですが、お店に勤めてからは、怒られる理由があったからです。怒られても怒られてもニコニコする黒岩さんを先輩も可愛く思うようになり、飲みにも良く連れて行っていだだけるようになったと言います。「他のヤツは、愚痴ばっかり言っているのに、黒岩は、いつもニコニコありがとうございますと言う。気持ち悪いけど、好きやで・・」と大阪弁で言われたことを今も黒岩さんは覚えていると言います。

そんな黒岩さんは、海外で自分の力を確かめたいと思うようになり、最初にスイスに一人修行の旅に出ました。スイスのレストランでしばらく働いた後、ミシュランの星が付く店で働きたいとフランスのパリに行きます。しかし、フランス語も片言の黒岩さんは、約100軒程、雇ってほしいと周りましたがどこも雇ってくれません。もうダメか?と少し弱気になって、最後の一店、訪ねたお店の店員にオーナーがもうすぐ帰ってくるから待っていろ!と言われ、オーナーが戻ってきて面接しました。そして、いろいろと聞かれましたが、黒岩さんは、しっかりと受け答えができたと言います。フランス語が話せないのになぜか・・・それは、今まで、100軒断わられて、聞かれることが何かがわかり、フランス語での受け答えがわかっていたからです。やっと憧れのミシュラン2☆で働くことができるようになり、黒岩さんは嬉しくてたまらないので、誰よりも朝早く店に出て、夜12時過ぎまで働いたと言います。

さらに、黒岩さんは、ミシュランの3つ星で働きたいといった思いを強くします。そして、偶然にそのことを働いていたお店のオーナーに話すと、2☆のオーナーは、「クロ、本当に3☆で働いてみたいのか?」と言いました。「ハイ・・・」と黒岩さんが応えると、オーナーは直ぐに、受話器を取り電話を掛けて3☆オーナーに「自分のところで働いている日本人の料理人がお前のところで働きたいと言っているがどうか・・」連絡したのです。結果、黒岩さんは、フランスの3☆レストランで働くことになります。

「2☆レストランのオーナーの声掛けがあったからといって、そんな簡単に3☆レストランで働ける?」と私が黒岩さんに言うと、真実を教えてくれました。
「無休無給の条件で働いていた」と黒岩さんは言うのです。「では、どうやって生活していたのですか?」と聞くと、「土日に、日本料理店でアルバイトして食い繋いでいた」といった応えが返ってきました。黒岩さんは、3☆レストランでも、2☆レストラン同様に、月曜日~金曜日まで、店の誰よりも早く店に出て、誰よりも遅く店を出る生活をし、土日はアルバイト。そして、手持ち資金が尽き、フランスに渡って3年目に日本の大阪に返ってきて、帰国後に日本で知り合った奥さんと冒頭で紹介した小さな小さな1号店を始めたのです。そして、日本に帰ってきて1号店を初めて15年、今年、夢が実現する日がついに訪れます。フランスにも出店することになったからです。






黒岩さんに限らず、起業して成功した経営者の経緯を聞いていると、腹の底から込み上げてくる思いがあります。これがなくて、売上だ利益だと言っていても長続きは決してしないと感じます。東京の青山の感動のレストランといわれる某店に知人の紹介で食事に行ったり、どうせなら・・・取材も兼ねて多少無理してでも行きますが、私は、ル・クロが一番好きです。圧倒的に、料理、接客その他、上回っているにも関われず、お手頃な値段で、仏蘭西料理が好きでもフォークの使い方が苦手な方向けにも用意された箸など、気軽に食事ができるだけでなく、本日、ご紹介した他にも、飲食店では珍しいと思いますが、全員、正社員です。そして、社員がル・クロを辞めても、また、帰ってくることからも、いかに、社員を大切にしているかがわかります。詳しくは、黒岩さんの著書に書かれていますし、また、マネジメントの観点で、カメさん日報にも書きたいと思います。















【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。


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