太子食品工業にみる手間やコストをかけることの重要性

カレーチェーン店「CoCo壱番屋」が廃棄した冷凍カツが横流しされた事件で、カツを購入した製麺業者「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)の実質的経営者(78)が18日、産業廃棄物処理業者から仕入れた壱番屋製品以外の冷凍食品についても「賞味期限切れだったが、試食で問題がなかったので販売した。廃棄物とは知らなかった」と述べた。 実質的経営者によると、壱番屋から廃棄を委託されたカツを横流ししていた産廃業者「ダイコー」(愛知県稲沢市)から購入した空揚げなど。実質経営者は「愛知県内の卸業者に売った」と話している。記者団の取材に答えた。岐阜県のこれまでの調査で、みのりの冷凍庫からは、マグロや焼き鳥など、段ボール約200箱分の冷凍食品が見つかっている。大半が賞味期限切れで、実質経営者は県に「ダイコーから買った」と説明しているという。


(産経WEST20160118記事より引用)


みのりフーズもダイコーも、努力も手間もかけることなく、儲けようという姿勢自体が、企業経営をする資格がないと思います。中国の食品偽装は“エビ”までも、殻の中身はなんとゼラチンといったニュースが半年ほど前にも流れ、冷凍餃子から始まって数多くの食品偽装が報じられています。軽蔑を込めて中国のことを言いますが、今回のみのりフーズ、ダイコーのような報道があると他国のことを言えないと思います。


こうした現状の中、食品偽装とは無縁で、尊敬する会社をご紹介します。


青森に本社を持つ太子食品工業です。


以前、大豆の遺伝子組み換えについて、大きな関心がもたれた時期があります。その際に、太子食品工業の工藤茂雄社長がとられた勇気ある行動に大きな尊敬の念をいだきました。


遺伝子組み換え作物の問題に関して、1997年遺伝子組み換え大豆不使用を国内で一早く決断し、新聞に全面広告を出しました。このことが、問題になり、国会での説明が求められます。私自身、詳しいことはわかりませんが、アメリカからの圧力があったと言う人もいます。 大豆(遺伝子組換えでない)と表示されていても、厳密にいえば、遺伝子組み換えがある一定以下の場合は、遺伝子組み換えでないと表示されています。なぜ、こうしたことになっているのかわかりませんが、違和感を感じざるを得ません。


工藤社長が、国会で答弁した内容の抜粋は以下の通りです。


なぜ遺伝子組み換え大豆を使用しないこととしたかの私どもの企業姿勢とその経緯、そしてその表示に関する私見を述べさせていただきたいと思います。~中略~近年では、ハム、ソーセージ、練り製品、ハンバーグ、パンや菓子等々にも原料として使用され、私ども消費者がそれと自覚しないうちに食べる機会も多くなっております。~中略~かようにすばらしい可能性を秘めた大豆加工食品ではありますが、私どもの業種の納豆、豆腐業は、企業間の過当競争と小売業界の変化に対応できずに苦況にあえぐ業者が多く、毎年多くの廃業者を出しているのが実態であります。こうした環境の中で、私ども太子食品工業株式会社は、価格的経済性のみを追求するのではなく、お客様の健康や安全性、安心感を追求することによって顧客満足を高めることを目標に企業活動を続けてまいりました。
~中略~


 こうした方針は、手間暇が多くかかったり、投資コストが多くなったり、原料の歩どまりが悪化したりで、経済的には採算性を悪くすることばかりです。
 繰り返しになりますが、私ども太子食品工業株式会社は、当座の利を追うことより、お客様の健康、安全、安心を追求することによってお客様の理解をいただき、企業存続の源としていこう、万が一御理解いただけない場合でも、お客様が知らず知らずの間に病気になるのを防いだり健康になっていただけたら、生産者としては本望ではないかという方針のもとに経営を続けてまいりました。 ~中略~


 さて、こうした企業活動を続けておりました昨年十月、新穀の大豆を調達しようと毎年仕入れをしている商社と商談いたしましたところ、当年のアメリカからの輸入の新穀には遺伝子組み換えがなされた大豆がまじって輸入され、年明けからその大豆が販売されるとの説明がなされました。~中略~
 一部とはいえ、その安全性に疑義を持っている専門家の意見も入ってまいりました。こういう状況下で、本年度の原料調達の意思決定が迫られたわけでございます。近年、PL法制定の背景からもわかるとおり、製造者責任が強く問われております。そして、納豆、豆腐は、油等とは違い、大豆たんぱくをそのまま加工してつくられる食品である上、米国や欧州と違って消化される量がけた違いであるのはさきに述べたとおりでございます。


新しく組み込まれました遺伝子がっくるたんぱくを直接口にする、そして、そのたんぱくは虫を殺したり除草剤に耐える力を持っている。仮に理論的に安全だとしても、お客様はそういうものを食べたいのだろうか。私は社長として、社員にさんざん、お客様の安全、安心、健康づくりで顧客満足を図り、社会貢献するのだとハッパをかけてきたではないか、ここで、この状況で妥協したら、私の方針は、社員はもとより社会からも信頼されないのではないかと考えました。


~中略~
選別して運ぶ方法を探すように四方八方手を尽くしましたところ、特定の品種の選別大豆であることを保証する大手商社が見つかり、また、中国等米国以外の大豆の入手も図り、一年分の大豆を約一万トン調達いたしました。しかしながら、その結果、私どもが想定しておりました価格より随分高い、前年より約五〇%以上高い原料を仕入れることになってしまいました。
 昨年末には何とか調達のめどはっけたものの、般社会ではほとんど遺伝子組み換え食品についての情報が出てこず、皆さんは無関心の状態でございました。一方、旧穀の原料は底をつき、高い原料を使わざるを得ない状況が近づいておりました。原価アップ分を価格に上乗せしなければ、確実に赤字化します。そこで、別添の資料におつけしたような新聞広告により、遺伝子組み換え大豆を使わない旨の宣言を一月中旬に行いました。


~中略~
 こうした広告の反応はすさまじく、消費者の方々から、たくさんの励ましのお手紙、激励電話等をいただきました。また、さまざまなメディアによってこの宣言が紹介され、話はすぐ全国レベルでの話題になり、方々から御支援、御支持のお便りをいただきました。一方、さまざまな方面から、迷惑なことである、できもしないことをスタンドプレーだと御批判をいただいたことは、大変意外なことであり、残念でございました。


~中略~
しかしながら、法的に表示が必要になれば、かなりの量の穀物が遺伝子組み換えをされずに管理され、安く流通すると思われます。事実、先日の日経新聞の紙上で、選別大豆を供給する穀物会社がアメリカに出現した、こういう情報が報道されております。そうなれば、組み換えられた食品群と組み換えがなされない自然交配の食品群がセパレートされ、消費者の方々が自由に選択できるようになると思われます。


 また、法的な表示規定が無理であれば、当社のように、遺伝子組み換え作物でない作物を原料としているという逆表示をする基準を定めていただきたいと思います。当社に対してもそうですが、本当に組み換えていないのか、イカサマでないのかといった疑義が常に寄せられている状況では、一般企業はなかなか表示に踏み込めないのではないでしょうか。~中略~
 いずれにしろ、一般の消費者やユーザーにとって、理解を絶するスピードで事が進んでいることだけは事実です。こういうことに対して全く不安を感ずるなという方が無理があるのではないでしょうか。であるならば、情報を公開し、選択の判断を消費者にゆだね、消費者にも自己責任を負ってもらうべきであろうかと思います。
 実質的同等性については、行政が押しつけるのではなく、消費者が判断すべきことではないでしょうか。


第140回国会 消費者問題等に関する特別委員会遺伝子組換え食品の表示問題等に関する小委員会 第2号
平成九年七月二十四日(木曜日)議事録より抜粋


こうした工藤社長の勇気ある行動により、2001年に、遺伝子組み換え大豆の使用表示が義務化されました。


遺伝子組み換えだけでなく、同社の一丁寄せによる製造方法は、他社とは異なります。通常は、大きな豆腐をつくり、最後に容器に入るサイズに切ります。そしてその際、雑菌がつかないように消毒といったことも行われます。しかし、「一丁寄せ製法」でつくる豆腐は、包装されるまで、人の手や水には触れず、無菌に近いクリーンな製造工程で作られます。そのため、通常は、日持ちがしない豆腐を、長い日持ち(賞味期間13 日間)を実現しているのです。私も同社の日光工場を工藤社長と工場長のご案内で見せていただきましたが、設備投資と従業員の方が働きやすい環境整備は、かなりの投資がなされていることは、素人の私でもわかります。


 



まさに、同社がやっていることは、手間がかかる、お金がかかる、努力しないとできないことばかりです。


しかし、これが本来の企業の姿勢ではないか!社会に価値のある存在としての企業経営ではないか!と思います。


急成長を目指す会社が、ファイナンスの知識に基づき、M&Aその他で会社を大きくしますが、食品偽装とは次元が違いますが、社会的な価値を高めるといった大義とビジョンが明確であること、動機が善であることが前提であると思います。いずれにしても、利益は、手間をかけたご褒美と考える企業が、最終的には長く支持されるのだと思います。

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