「ともに」を大切にして成長する株式会社特殊衣料

先日、北海道札幌で、坂本先生と瀬戸新ゼミ長と、人を大切にする経営学会の北海道支部の打ち合わせと、HBA、特殊衣料の2社、企業視察にお伺いしました。お伺いした2社とも、北海道を代表する素晴らしい会社ですのでご紹介したいと思います。

今回ご紹介する株式会社特殊衣料は2回目の訪問です。今回は、時間がなく1時間程でしたが、前回は3時間近く、いろいろな事業を見せていただきましたので、2回の訪問で取材した内容をお伝えしたいと思います。








会社名株式会社 特殊衣料
住所北海道札幌市西区発寒14条14丁目2−40
資本金4,000万円
事業内容●リネンサプライ(病院、施設)
●清掃(病院、施設)
●福祉用具
(開発製造、レンタル・住宅改修、販売)
代表者名池田 啓子
従業員数168名(内パート92名)
(知的障がい者21名、身体障がい者2名、聴覚障がい者1名)
※平成26年3月現在

2005年に小泉首相(当時)も訪問された企業です。さっぽろ雪まつりで、雪の降る中、小泉首相が茶色の帽子をかぶっていた写真が、特殊衣料のお部屋に飾られていましたが、その帽子は、株式会社特殊衣料が製造販売している保護帽「アボネット」です。
特殊衣料のホームページに掲載されている写真ですが、とてもおしゃれで、しかも、転倒しても後頭部を打つ心配もありません。

特殊衣料はスタートは1979年で、2年後には株式会社特殊衣料になりました。創業者は、現在の代表取締役社長 池田啓子さん(以下池田さん)の叔父の田中弘さんです。池田さんは、雪印乳業の北海道支社に勤めていて結婚して出産を機に退職して専業主婦を10年していた方です。叔父さんから手伝ってほしいと言われてパートで勤務し始めたのがスタートです。その後、課長、専務、今は社長に就任し、長年、複数の組織を引っ張っていっています。

特殊衣料は最初、病院向けの布おむつやシーツ、タオルなどいわゆるリネンのクリーニングでスタートしました。札幌市内の病院の入院患者さんの家族が札幌に住んでいるとは限りません。北海道全域から入院されます。病衣は貸してもらますが、シャツ、パンツは自分で用意しなればなりません。そのため、シャツ、パンツ、衣類などのリースや私物のクリーニングも行っています。入院患者が利用者なので数が多く、且つ、入退院で頻繁に入れ替わります。私物が紛失するとなるとトラブルになるため、独自開発したのがバーコードを利用した管理システムを構築しました。クリーニング品にバーコードを付け、その数字情報ですべてを管理して急な精算にも対応できるようにしています。

病院施設などの清掃業務も行っています。従来の床清掃とはちがった合理的で衛生的な方法です。大きな病院からの清掃のお話があった時、他の清掃業者は、病院も普通のビル清掃と同じ方法でやっていました。病院なので、衛生的であることが重要と考えて、デンマークに研修に行き、コスト高にはなりますが、デンマーク方式を取り入れることにしました。

通常の床掃除は、モップを使いますが、何度も使っているうちに水はどんどん汚れます。汚れた水でモップを洗ってもなかなかキレイにならないだけでなく、汚れには有害な細菌などが含まれています。デンマーク方式では、床掃除では1つのモップに2つのバケツを使います。床を拭いたモップは1つ目のバケツに入れて汚れを落としてスクイザーでしぼられます。次に清水の入った2番目のバケツに入れられ、しぼられたモップで床を拭きます。それがまた1番目のバケツに入れられ、すすいでしぼって2番目のバケツということを繰り返します。1番目のバケツはどんどん汚くなりますが、2番目のバケツはそれほど汚れません。同社では病院の区域ごとにモップやバケツを別にして使用し、定期的に自社でクリーニングしています。デンマーク方式には、空間清掃もあります。ドアのノブ、棚、他、立体的に清掃するのが、空間清掃です。MRSA(メチシリン耐性黄色葡萄球菌)やノロウィルスといった院内感染が問題になっていますが、空間清掃をすることで、こちらも、コストは高くなりますが、ある程度、抑えることができます。

冒頭にご紹介した保護帽だけでなく、福祉用具の開発、製造、販売、レンタルを全て行っています。「高齢者体験セット」「片マヒ疑似体験セット」も販売し、オリジナルビデオをつくり、装着方法だけでなく具体的な指導方法や体験方法を盛り込んで提供しています。小泉純一郎首相がかぶった保護帽「アボネット」は冬道での転倒という北海道ならではの事情から生まれました。外出用の「シティ」、屋内用の「ホーム」、スポーツ用の「スポーツ」などとシリーズ化しています。また、癲癇で急に倒れる可能性がある方にも利用されています。ちなみにアボネットは、過去、道庁などが主催する「北の生活産業デザインコンペティション」で最優秀である大賞や日本産業デザイン振興会のグッドデザイン賞も受賞されています。

アボットを始め、こうした商品は、産学官連携で開発されてきました。他にも、高齢者や障がい者が、簡単にたためる冬道用の杖の開発その他、数多くの工夫された商品があります。

特殊衣料は、障がい者雇用にも熱心にとりくんでいます。現在では、168名の社員の内、24名が障がいを持つ方です。当初、池田さんは、何か事件や事故が起こったらどうするか心配だったために、障がい者雇用には否定的だったそうです。特別支援学校の進路指導教員から熱心な実習依頼があり、池田さんは、知的に障がいのある人がクリーニングを学んでいる授業を見学に行きました。一生懸命に働く様子を見て、感動し職場実習生を1名受け入れたことを始まりです。日本理化学工業と同様に、現場の社員から、一生懸命に頑張っているので受け入れたいといった強い要望があったそうです。

2005年には、社会福祉法人ともに を設立し、池田さん自ら理事長に就任、障がい者の就業支援も熱心に行っています。

本社の隣にある「ともにアートギャラリー」には、障がいを持つ方が描いたアートが数多く展示されていて、その色使いなどは、本当に素晴らしい!
社会福祉法人ともにの理念は「ともに輝くために」「ともに働き」「ともに支え」「ともに喜び」「ともに歩み」「しあわせの和を広げます」です。池田さんが、熱心に障がい者雇用と、自立に取り組んできたことで、多くの人は、まさに、経営理念にあるように、「ともに」応援してくれているのだと思います。

特殊衣料のように、人にやさしく、しっかりと、ビジネスも展開するような企業が増えれば、再び、日本も世界から尊敬される国になるに違いありません。


【筆者プロフィール】
藤井正隆
株式会社イマージョン代表取締役社長

人を大切にする経営学会理事・事務局長


社会性と経済性を両立させた経営を実現している「いい会社」研究と変革支援がライフワーク。大学院の特任研究員として活動し年間100社以上の全国各地の優良企業を現場視察し、経営学を中心にそのメカニズムを研究。企業事例と理論を融合しわかり易く伝えている。

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